2019年4月2日火曜日

兎に角大きいのである


世界のニュースを見るときには、地図などでその位置関係や大きさを理解しないと、判断を誤る。世界は、日本では実感として想像ができないほど長く広いのである。
万里の長城もそうだが、頭で思っている以上に規模が違うのである。その総延長は21196.18キロメートルに及び、日本列島の長さである3294キロメートルをはるかに凌ぐ。
その中でも三峡ダムは、2009年に完成した洪水抑制・電力供給・水運改善を主目的とした巨大なものとして知られているが、どんなくらい大きいかということについての実感を持って理解している人は少ない。
三峡ダム水力発電所は、2,250万キロワットの発電が可能な世界最大の水力発電ダムである。
ダムは長江三峡のうち最も下流にある西陵峡の半ばに建設された。
貯水池は宜昌市街の上流の三斗坪鎮に始まり、重慶市街の下流にいたる約660kmに渡る。
660キロメートルと言えば、東京から神戸までの距離ということになるのだと考えれば、大きさの想像がつく。
このダムの建設によって、それまで重慶市中心部には3,000t級の船しか遡上できなかったのが、10,000t級の大型船舶まで航行できるようになった。加えて、水力発電所は中国の年間消費エネルギーの1割弱の発電能力を有し、電力不足の中国において重要な電力供給源となる。
また、火力発電と比べ発電時のCO2発生も抑制することができる。
しかし、良いことばかりとは言えない。建設過程においては、その地の住民110万人が、殆ど補償されることなくの強制移転させられたというし、杜甫や李白の漢詩に詠われた三峡各地に残る名所旧跡の水没、更には水質汚染や生態系への悪影響等の問題も指摘されている。 日本でこれをやろうとしたら、反対運動の嵐が吹き荒れる。
何よりも危惧されるのは、あまりに巨大すぎて、絶対的に必要である浚渫などのメンテナンスが行き届かない。万一決壊するようなことがあれば、下流域の大都市に甚大な被害が及ぶ。
そんなことは起こったときに考えればいいということらしく、手を付けられない流域部分では崩落も現実化しているらしい。
因果関係があるのかどうか判らないが、阪神淡路大震災の30倍のエネルギーであったと言われる2008年の四川大地震は、三峡近くにある巨大断層に、ダムの膨大な水圧により浸み込んだ水が影響しているのだともいわれる。
巨大なダムに湛えられた水が蒸発することによる気候変動も無視できなく、台風などと重なると甚大な被害を齎す。
ダム建設当時に耐用年数10年といわれていた施設は大丈夫なのだろうか?

むかし大連を訪ねたことがある。その数年前に旅行したときにはなかった広い高速道路が遥か彼方まで続いているのを見て仰天した。
案内してくれた人に聞いてみたところ「ここは中国だよ。反対運動や住民投票など関係ない。政府がここに道路を作るといって地図に線を引けば、あっという間にできてしまう。」との答えが返ってきた。強制的に行ったことは、きちんとしたフォローがないと、大事故に繫がりかねない。

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