2018年2月3日土曜日

アラビアンナイトに出てくる「おんぶジジイ」

子供の頃、アラビアンナイト(千夜一夜物語)というのをよく読んだが、考えて見れば物語ができた発端がそもそも恐ろしい。
昔々、ササン朝ペルシャにシャフリヤールという王がいた(:物語上の架空人物)。
王は、妻の不貞を知り、妻と相手の奴隷たちの首をはねて殺した。
女性不信となった王は、街の生娘を宮殿に呼び一夜を過ごしては、翌朝にはその首をはねた。街から次々と若い女性がいなくなっていくことに王の側近の大臣は困り果てたが、その大臣の娘シェヘラザードが名乗り出て、この悪習を止めるため、王の元に嫁ぎ妻となった。
一夜でも話が途切れたら命がない中、シェヘラザードは命がけで、毎夜、王に興味深い物語を語り聞かせ続ける。しかし話が佳境に入った所で「続きは、また明日」と話を打ち切る。
王は、話の続きが聞きたくてシェヘラザードを殺さずに生かし続けて、ついにシェヘラザードは王の悪習を止めさせることになった。

その物語の中に「シンドバッドの冒険」というのがある。
日本にも子抱きジジイという妖怪がいるらしいが、シンドバッドに出てくるのは「おんぶジジイ」というかなり質が悪い爺さん。

シンドバッドは冒険の虫が動き出し、知り合いの船長に頼んで船に乗せてもらうことにしたのだが、その船は難破してしまい、シンドバッドは一人小さな島に流れついた。
その島にはやせこけて心細げなおじいさんが座っていた。シンドバッドはかわいそうに思い、その爺さんに親切にすることにした。
爺さんが自分をおんぶしろ、というのでそのようにすると、爺さんはあっちへ行けこっちへ行けと命令し、自分ひとりが木の実をムシャムシャと食べ、シンドバッドが食べようとすると足で蹴飛ばして食べさせない。あまつさえ、しっこもうんこも背中で垂れ流す。
やっと眠ったかと思ってそおっと離れようとするとすぐに気づいて、ぐいぐいと首を締め付けてくる。
どうやっても引きはがせない爺さんの言うがまま、シンドバッドはよろよろと島中を歩かされ続けた。
ある日のこと、シンドバッドは瓢箪が落ちているのを見つけた。そうだ、この中にぶどうの実を入れてぶどう酒をつくろう。そして爺さんに飲ませて酔っ払わせ、その間に背中から振り落と考えた。
いい匂いの立派なぶどう酒ができあがると、シンドバッドはそれを飲み酔ったふりをして気持ち良さそうに踊りだした。すると爺さんもそれを欲しがり一息に飲み干した。
酔っぱらった爺さんは大騒ぎ。シンドバッドは今こそ爺さんを振り落とす好機だと思い、
首すじをつかんでドボーンと川に叩き落した。
逃げ出すことのできたシンドバッドは、いかだで海に乗り出し風の吹くままに流されていると、通りかかった船に助け上げられたのだった。
その船長さんは言った。「おんぶジジィーにつかまって生きて帰った者は一人もいない。お前さんは幸運な子だ」と。

日本はおんぶではないが、抱き付かれて往生しているように思えてならない。


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