2018年10月27日土曜日

書き終えるまで時間がかかった小説


小説「夏風越の」の最終章部分

数馬は、このところ守屋山で巡り合った羽衣を纏った天女のことを度々想い出す。
そのときの会話は、およそこんな内容であった。
「人は望むものを手に入れる為に力が必要だと思っている。武力や暴力であったり、金力であったり、権力であったりするが、それを手にした途端、その先に何をしようと思っていたのかを忘れる。その先があった筈なのじゃ。何事をか為さんとすれば、何らかの力は必要じゃ。気づけばそれらは誰もが持っている力ではあるが、他を虐げることなくエネルギーを形にすることができるようになるには段階がある。確かに、未開ゆえ誰かが統べて導かねばならぬ時代もあろうが、義として立てた理想であっても時代を継ぐものがそれを自分に都合よく変えてしまうことはよくあること。自分勝手に振る舞うことのみが目的となっている者共には、まだそのような能力は与えられぬ。体の仕組みと同じでどこも大事ではあるが、それぞれに役目というものがある。全部を慮ることができるかどうかじゃ。無尽蔵にあるものは、誰も奪い合いはしないものじゃ。それによって争いは起こらぬ。
この世が物質で成り立っている以上、何かを得ようとすれば対価が必要となるが、豊かであろうとするなら対価以上のものを与えねばならぬ。
余分に支払うもよし、相手が喜ぶような感謝の気持ちでもよし、付け加えることはあっても決して見合う価値から少しなりとも奪ってはならぬ。そうしてこそより豊かさが増すというのが真理じゃ。奪えば奪われる、与えれば与えられる、教えれば教えられる。
本来、宇宙にはものを生み出す元となるものは無尽蔵にあるから、かまわず供給しても許されようが、当たり前に手に入るのだと思う者がいるならば、それは許されぬ。手にしたときに畏まることがあってこそ湧き出ずるがごとく現出するようになるのじゃ。物質的にはほどほど発展しつつあれど、肝心の魂が追いついておらぬ。
「星をも砕く力」とは、見切りをつけられたら創り変えることを辞さぬ大いなる意思があるということと知るがよい。さほど猶予はないぞえ。
前世から200年も経ってはおらぬ。400年はかかる転生が、それほど急を告げているということじゃ。
此度も共に生きる仲間ができているようなのは喜ばしい。今生は、金力と肉体の快楽を学んでみるか?」
「もそっと近う寄れ」手招きされ誘われたのは、柔らかく眩いばかりの光に包まれた空間であった。光は溢れているがまぶしくはなくて、限りなく心が穏やかにいられる場所であった。

「まず、其方がわらわの中に入ってきやれ。神話にいうところの『まぐわい』じゃ。しかる後、わらわがそなたと一体となって国生みをする。何が生まれいずるかはわからぬが、この世に生を受けたら増やすことがつとめ。産みの苦しみというが、それは嘘じゃ。途轍もない快感に見舞われよう」
そういいつつ、ハラリと羽衣を足下に落とした。現れた裸身はこの世のものとは思えぬ美しさで、導かれて内に入った数馬は余りの快感に震えた。

最近の表れ方は、絹の白無垢をきりりと身に纏った姿をしている。
「いろいろ経験して学んだようじゃが、あのときと考え方が少しは変わったか?」
「はい、何事であれ望んで意識すれば、それはすべて実現するということです。それが叶わないのは、自らがブロックしているからな
のだと判りました。自らを変えたくないとい
う自我の防御意識がそれを拒んだときには、変化は起こりません。自意識の中に、自分が侵してきたマガ事に忸怩たるものがあれば、猶更です。しかし、大義の為に自分を許し他人を許し自分を愛し他人を愛すということを意識して光に変えてそれを開放すると、内なる真我・内なる神の領域に届いて、何事も実現するようです。この世の善悪とは違う何かがあるようです」
「そうじゃ。内なる神は、外なる宇宙の神の意識と全てつながっているのじゃ。神の許し賜うものは実現するのじゃ。なればこそ、多くの者がそれに気づき、互いが争わずとも必要なものは必要なだけ手に入ると解れば、人たるの道を踏み外すことはなくなろう。さすれば、地球という星が破壊されることもなかろう。思考は現実化する。宇宙に溢れる物質エネルギーが不足することはないと知らしめよ。ひとえに、そなたらの働きにかかっているのだと知れ!」

これにて筆を置くことにします。
長きに亘ってお付き合い下さり、誠に有難うございました。
=完=

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私が書いた小説 
ある日突然、頭に「これを書け」という声が響いて書き始めた小説「夏風越の(なつかざこしの)」は、書き始めてから年月がかかった。
どう書き進めるのかは、降りてくるお告げに従ってのことであるから、一気に何ページにも及ぶこともあれば、何か月にもわたって一文字も書かないということもありました。
幕末から現代に生まれ変わって、超常現象を介して話しが進むということなのですが、何かが時々降りてきて言われる通りに少しずつ書き進め、2018年10月10日、第12部の後、最終章をまで書き終えました。長きに亘り有難うございました。

童話 「トイレの神様」・「お祖父ちゃんの神様」・「鬼切丸」・「昔ばなし」・「麦の命」・「猿酒を飲んだ天狗」・「狐のお嫁さん」・「花を摘んでいた少女」ほか、幼児に読み聞かせるのに良さそうなお話を書いています。

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