2021年2月26日金曜日

徳の国なんかではなさそう

 

『厚黒学』という、清の末期に書かれた英雄になるための研究書があるのだという。これに沿わないのでは中国で頭角を表すことができないと喝破している論があるのだという。
その原則は「面の皮は城壁より厚く、腹は石炭よりも黒く生きよ。」ということ。
儒教道徳の裏にかくされた中国四千年の原理であり、古来の英雄豪傑の行動を分析して編み出した処世術であり、現代も中国で読み継がれる隠れた「成功哲学」らしい。
これを理解すると、中国人のしたたかな駆け引き、振る舞い、驚くほどの現実主義・個人主義の秘密が見えてくるという。

清の末期、四川省にあらわれた鬼才・李宗吾は、自分は努力したところで自らの能力には限度があると悟り、それまでに学んだ伝統的な儒教価値観を中国に栄光とともに大いなる停滞と閉塞をもたらした元凶と断じ、完膚なきまでに論破した。
その思想は『厚黒学』という中に集約され、当時清を侵食していた欧米列強と日本の前になすすべのない中国人を救うという名目から、発表されると同時に大反響と空前の論争を巻き起こし、近代最大の奇書とまでいわれた。

そもそもの『厚黒学』の原典は『史記』や『三国志』、『老子』『韓非子』『老子』『戦国策』にあり、そこに記されたエピソードを引用しながら、厚黒学の奥義を極めるためにはどうすればよいかを事例を交えて展開している。

当時李宗吾は、英雄豪傑に憧れて四書五経や諸子百家や二十四史を熟読したものの、望むような結果得るところがなく、そうした中である時に突然『厚黒学』の着想を閃いたそうです。
厚黒の厚は厚かましさの厚であり、厚黒の黒は腹黒さの黒。
『厚黒学』を表面的に読めば、多くの歴史上の人物の行動例を示して、「厚黒であれば成功し、不厚不黒の者は失敗する」と唱えているだけのもので、立身出世するための極めて自己中心的な論であるようにも言われる。

しかし李宗吾は『厚黒学』の中で自修能力が大事だと説いており、また「わたしは、ひとつのルールを定めている。
 厚黒を用いて一個の私利をはかるのは、最も卑劣な行為であり、厚黒を用いて衆人の公利をはかるのは、至高無上の道徳である」としている。
その通りであれば、数多くの原典を背景を念頭に入れながら取り組む書物であることは確かなようだが、中国人たちのふるまいをみていると、怪しさを感じてしまう。

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