2018年11月24日土曜日

童話「花を摘んでいた少女」


童話 「花を摘んでいた少女」

小さな女の子が、野原に咲いている花を摘んでいました。
オレンジ色の花を探しては摘んでいるらしく、手に持っているのはまだ数輪しかありま
せんでした。
ベンチに座ってそれを見ていた若いお兄さんがいたのですが、突然小さな天使が舞い降
りて、そのお兄さんの肩にとまったのです。お兄さんは立ち上がると、その少女に近寄り
声をかけました。
「オレンジ色の花が好きなの?」
「ううんそうじゃないの。お母さんが好きな色なの。」
「じゃあ、お母さんにプレゼントするんだ?」
「うん、本当はお花屋さんで買えるといいんだけど、私のお小遣いではとっても買えない
から。」
「どうしてお母さんにあげたいと思ったの?」
「お父さんが急に亡くなってしまって、お母さん元気がないの。だからお花を上げて元気
になってもらいたいの」
小さな女の子が思いつく精一杯の気持ちでした。自分だって悲しいに違いないのに、ま
わりに気遣いをする姿が健気でした。思わず胸が詰まって、お兄さんは泣きそうになって
しまいました。お兄さんは、どうして少女に声をかけたのかのわけが判りました。
「そっか、お兄ちゃんは実はお花屋さんなんだ。お兄ちゃんからもプレゼントしたいんだ
けどいいかな?お店のお花さんたちも喜ぶと思うんだ。川を渡ってすぐのところにお店が
あるんだけど、一緒に来てくれるかな?」
少女は初対面のお兄ちゃんなのに、疑いなどもちませんでした。きっと、肩に乗って優
しく微笑んでいる天使が見えたからに違いありません。心が綺麗だと見えるのです。
お花屋さんに着くと、お兄さんはオレンジ色の花を選び、少女が積んだ花にもリボンを
結んで一緒に添えて大きな花束を作り、綺麗にラップして飾りました。
中にはひらがなで書いた小さなメッセージカードもいれました。
「おかあさんげんきだしてね」
受け取った少女は嬉しそうに微笑み、丁寧にお辞儀しました。

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