童話 「花を摘んでいた少女」
小さな女の子が、野原に咲いている花を摘んでいました。
オレンジ色の花を探しては摘んでいるらしく、手に持っているのはまだ数輪しかありま
せんでした。
ベンチに座ってそれを見ていた若いお兄さんがいたのですが、突然小さな天使が舞い降
りて、そのお兄さんの肩にとまったのです。お兄さんは立ち上がると、その少女に近寄り
声をかけました。
「オレンジ色の花が好きなの?」
「ううんそうじゃないの。お母さんが好きな色なの。」
「じゃあ、お母さんにプレゼントするんだ?」
「うん、本当はお花屋さんで買えるといいんだけど、私のお小遣いではとっても買えない
から。」
「どうしてお母さんにあげたいと思ったの?」
「お父さんが急に亡くなってしまって、お母さん元気がないの。だからお花を上げて元気
になってもらいたいの」
小さな女の子が思いつく精一杯の気持ちでした。自分だって悲しいに違いないのに、ま
わりに気遣いをする姿が健気でした。思わず胸が詰まって、お兄さんは泣きそうになって
しまいました。お兄さんは、どうして少女に声をかけたのかのわけが判りました。
「そっか、お兄ちゃんは実はお花屋さんなんだ。お兄ちゃんからもプレゼントしたいんだ
けどいいかな?お店のお花さんたちも喜ぶと思うんだ。川を渡ってすぐのところにお店が
あるんだけど、一緒に来てくれるかな?」
少女は初対面のお兄ちゃんなのに、疑いなどもちませんでした。きっと、肩に乗って優
しく微笑んでいる天使が見えたからに違いありません。心が綺麗だと見えるのです。
お花屋さんに着くと、お兄さんはオレンジ色の花を選び、少女が積んだ花にもリボンを
結んで一緒に添えて大きな花束を作り、綺麗にラップして飾りました。
中にはひらがなで書いた小さなメッセージカードもいれました。
「おかあさんげんきだしてね」
受け取った少女は嬉しそうに微笑み、丁寧にお辞儀しました。
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