2021年6月21日月曜日

家畜からの感染病であるブルセラ菌が漏出

 

中国甘粛省にある動物用ブルセラ病ワクチンの製造工場から漏出したブルセラ属菌により、昨年周辺住民ら3,000人以上が感染したとのこと。工場の杜撰管理に加え、地方政府の隠蔽体質が浮き彫りになりました。

ブルセラ症はブルセラ属菌による人獣共通感染症で、現在、世界で50万人の新規感染者が毎年発生しています。ヒトに病原性を持つ主なブルセラ属菌は、Brucella melitensis(自然宿主:ヤギ、ヒツジ)、B.suis(ブタ)、B.abortus (ウシ、水牛)B.canis(イヌ)です。通常、潜伏期は1~3週間で、軽症では風邪様の症状を示します。発熱は主に午後から夕方に認められ、発汗とともに朝に解熱します。このような発熱パターンを間欠熱と呼び、数週間続いた後、症状の好転が1~2週間認められますが、再び発熱を繰り返す波状熱が特徴です。未治療時の致死率は5%程度とされ、その大半は心内膜炎です。

日本でも過去に家畜法定伝染病である牛や豚のブルセラ病が流行していましたが、摘発淘汰方式により撲滅を図り、現在ではほとんど発生はありません。

つまり、血清反応で陽性であれば淘汰するという方式です。家畜のブルセラ属菌は非常にヒトに感染しやすく10~100個の菌で感染すると報告されています。

感染動物の加熱不十分な乳やチーズなどの乳製品や肉の喫食による経口感染が一般的とされています。また、流産時の汚物への直接接触や、汚染エアゾルの吸入によっても感染します。

日本では家畜ブルセラ病はほとんど発生がありませんので、畜産物からの感染はほぼないと思われます。また、仮に万が一生乳が汚染していても、生乳中の菌は62.7℃で30分または71.6℃で15秒の加熱で死滅します。日本では市販牛乳は加熱殺菌されていますし、国産のフレッシュチーズの原料となる生乳も加熱処理されているので、市販牛乳や乳製品から感染するリスクは非常に低いことになります。

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