久し振りに、子供の頃よく歌った唱歌を聴きました。
メロディーが難しいわけでもなく、歌詞も至って淡々としているのにも拘わらず、浮かんでくる情景はとても豊かです。
和歌も俳句もそうですが、奇を衒ったような言葉や、思いついただけのけばけばしい表現をしたものが名句として長く残っているわけではない。
心に感じた神髄のものを残し、削ぎ落とし削ぎ落とししたものに集約されているから、割愛されたであろう情景や心情が、その裏から溢れんばかりに伝わってくるのだと思います。
踊ったり叫んだりというのも一つの表現方法ではありますが、昇華されたものとは程遠いものに私には思えるのです。
優れた職人が作ったものは、焼き物にしても工芸品にしても、簡素化された形の中に、厳しい修行と研鑽に裏打ちされた深い精神性を自ずから醸し出しているように感じます。
誰が見ていなくても、誰からも認められなくても、そうした努力に裏打ちされたものは、圧倒的に力強い。
そういうものが、後世まで残るのだと思うのです。
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