2016年2月2日火曜日

良いお伽噺だと思う「笠地蔵」

夕方に雪が降り積もる光景を見ると、私には思い浮かぶものが二つあります。

その一つが、三好達治の「雪」という詩です。
太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降り積む
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪降り積む
ゆっくり流れる、静かで優しい情感が好きです。

もう一つが、「笠地蔵」というお伽噺です。
昔々、ある雪深い地に、たいそう貧しい老夫婦が住んでいました。年の瀬が迫って来ても、新年を迎えるためのお餅を買うことのできなかった。
そこでおじいさんは、手造りした笠を売りに町へ出かけたのですが、笠はひとつも売れませんでした。
吹雪になりそうな空模様になってきたので、おじいさんは笠を売ることを諦めて、家に帰ることにしました。
吹雪の中で、おじいさんは、頭に雪が降り積もった7体の地蔵を見かけました。
さぞ寒かろうと、積もった雪を払いのけ、売れなかった笠をお地蔵様に被せてあげることにしたのですが、手持ちの笠は自らが使用しているものを含めても1つ足りません。
そこでおじいさんは、最後のお地蔵様には手持ちの手拭いを被せ、何も持たずに帰宅しました。おじいさんからわけを聞いたおばあさんは、「それはよいことをした」と言い、餅が買えなかったばかりでなく、笠もなくなったのに、それを責めませんでした。
その夜、老夫婦が寝ていると、家の外で何か重たい物が落ちたような音がしました。
戸を開けて外の様子を伺うと、家の前には米俵や餅・野菜・魚などの様々な食料ばかりか、小判などの財宝が山と積まれていました。
老夫婦は、降りしきる雪の中、手ぬぐいをかぶった1体の地蔵と笠を被った6体の地蔵が、背中を見せて去っていく姿を見たのでした。

このお伽噺には、舌切り雀や花咲爺や瘤取り爺さんのように、善悪を比べるものは出てきません。
しかし、こういうお話しを聞いて育った子に、悪い人はいないと思うのです。


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