2017年10月3日火曜日

言わなくてはわからないというわけでもない

「運悪く 生命線に 釘ささる」
どこかのお医者さんの作った川柳だと言うのですが、思わず笑ってしまいました。

「古池や蛙飛び込む水の音」余りにも有名な芭蕉の俳句です。
蛙が飛び込んで水面に波が広がっていく情景がありありと浮かんできますが、これはその情景を詠んだ句というわけではない。
辺りが静寂だから聞こえたのであり、すぐにまた、もとの静寂に戻るのだということが、日本人であれば説明されなくても理解できる。

言葉に出すと、人間はその言葉に行動を制限されると唱えたフランスの哲学者が、その範疇から世界で唯一外れるのが日本人だと言っているらしい。
言葉が表すことにとらわれない事象を伝えることができていて、それが共通して理解しあえる素養を持ち合っているというのである。

最近は、荒い言葉で相手を屈服させることだけを目的としたような議論をする人が目立つが、如何に理論武装しようがそういうものが相手に伝わることは少ない。
そこに駆け引きや、思惑含みの嘘まで加わったのでは猶更であり、簡単に見透かされるし信頼されない。
言わずもがな、という文化基盤が有るのである。

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