2017年3月26日日曜日

捨てずにすんだ家財

家内の母が、老後を気楽に過ごそうと東京から移り住んだ地方都市に、手広く商売をしている女性経営者が居ます。
以前に仕事上の付き合いで親しくしていたこともあって、この方の経営する住居に住まうことになった。
この方は、かなり気腑がよい。3・11の東日本大震災のとき、自分の住居には被害が全くなかったのだが、目の前に住んでいた人の家の屋根が瓦解したとき、自分の商売上の付き合いがある建設業者を直ちに手配して、瞬く間に修復してしまったことがある。
自分の生活がそれによって困ることはないとして、謝礼というものは一切受け取らず「雨が降る前に直ってよかったね。」と言ったのみだったことは、近隣でも有名な話である。

気持ちがやさしいのか、明らかに徘徊していると思われる老人を呼び止めて「上がってお茶でも飲んでいきな。」とリビングに通し、お茶を出して落ち着かせている間に、施設などに電話して迎えに来てもらうというようなことは度々で、根が親切である。

義母が突然倒れて後遺症が残り、介護施設に入らざるを得なくなったことから、家財を整理しなくてはならなくなった。
家の中というのは、想像以上に物が詰まっているものである。

1か月ほどをかけて整理し、捨てられるものは大量であったが思い切って何とか処分したが、捨てるには惜しいものが、これもまた大量に残った。
桐箪笥一杯に及ぶ着物数十枚・殆ど袖を通していない洋服も数十着・ローズウッドの食器棚にびっしり重なった見事な食器類その他・・・

リサイクルショップかネットオークションで捌けば、そこそこの値段になるのかも知れないが、そんなことをする気が少しも起こらなかった。
勿体ないけれど捨て去るより他仕方がないかと思っていたところ、様子を見に来てくれたその女性経営者が声をかけてくれた。
「電化製品も台所用品も、全部心配することないよ。」火災やら災害で困っている人はいっぱいいるよ。衣類などは、90歳でまだ生きている人が使っているものだから縁起がいいから、声をかければ貰い手なら沢山居るよ。
困っている人たちの人助けになるんだから、全部引き取ってあげるよ。」
自分が使おうというのではない。当方以上に十分ものが揃っている人の言うことである。
有り難かった。

処分業者に頼めば多額の費用がかかるだろうし、行き先があって無駄なく使ってもらえそうなのが、なんとも嬉しかった。洗濯機も冷蔵庫も台所用品も、そのまま全部引き受けてくれた。
最初から相談すれば、目をつむって捨てたものの中にも十分役立つものはあった。
下着類の新しいものについては、施設に問い合わせたら使ってくれるとの返事があり、数箱のダンボールに詰めて運び込むことができたのも、気分的にはせめてもの救いとなった。
「全部、あんたたちに任せるから、好きにして頂戴。」と言っていた義母にも、そのように報告した。「あ、そう。」とだけが返事であったが、それで良いという意味であったと感じた。

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