2017年8月23日水曜日

昔は不審尋問というのがあった

昔、大学を卒業したばかりの頃は、よく交通機関を全部止めてしまうようなストがあった。
事業を立ち上げたばかりのころで、仕事を休むわけにはいかないときであったから、夕刻、汚れた作業着のままで翌日の出勤のために会社の自転車を借りて、2時間はたっぷりかかるであろう道を、自宅に向かって帰ることにした。
途中でお巡りさんに呼び止められた。今でいうところの職務質問、当時は不審尋問と言った。

「それは君の自転車か?」今では考えられないような高飛車な聞き方であった。
その言い方に多少は腹もたったので、聞かれたことについてだけキッパリと答えた。
「いいえ、違います。」事実に相違はなく正直な返答であったが、途端にそのお巡りさんが血相を変え、「ちょっとそこの交番まで来い。」といった。
交番に着くと「どこからその自転車に乗ってきた?」とまるで盗んできたと決めつけたような聞き方であった。
「どこからって、会社から会社の自転車に乗ってきたのですが。」
「それを証明できるか?」
「多分まだ社長が会社に居ると思うから、電話すればわかります。」と言って、そばにあった電話を(当時は携帯電話などというものはなかった)取ろうとしたところ、邪険にそれを遮り「電話番号を言え。」という。
電話が繋がり状況説明をした結果、事実は事実でしかないから、かなりバツの悪そうな顔をして「もう行っても良い。」と言われた。

こちらも若かったから「呼び止めたのは不審尋問ということですよね。どこが不審だと思ったんですか?」と尋ねたのだが、要領のよい返答はなかった。
いまであれば、日々仕事に励んでいる警察官に手間を取らせるようなことは決してしないし、警察官も対応が丁寧だから、そんなやりとりにはならない。若気の至りということであった。
聞き方によって、物事は平らかにいく。

翌日会社に行くと、社長が苦笑いしながら「君も法学部出だからといって、ほどほどにした方がいいよ。」と窘められた。

何十年ぶりかでその近くを車で通ったとき、そんなことをふと思い出した。
今であれば、警察官を尊敬しているから、協力的に対応すると思うし、労いの言葉も口に出せる。


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