2020年3月19日木曜日

謀略戦には弱いのだから


終戦後に日本に襲い掛かり、北方領土を違法に占拠したことや、日本兵をシベリヤに抑留して長期にわたり強制労働に従事させたことなど、日本人がそれを忘れるわけがない。
経済的に行き詰って、北方領土返還を餌に、日本からの援助を引き出したいようだが、彼の国のことを知れば知るほど、信頼がおけないと思わせてしまう。
今まで知られていないことの一つに「ヴェノナ文書」というのがある。

今まで伏せられてきていたが、「国民の知る権利」を重んじる民主主義国家では一定の期間が経過すると、国家の機密文書も原則として公開される。
「民主主義国家」を自称するアメリカも情報公開を進めており、1995年に「ヴェノナ文書」を公開した。
これは、1940年から44年にかけて、アメリカにいるソ連のスパイとソ連本国との暗号電文をアメリカ陸軍が密かに傍受し、43年から80年までの長期にわたってアメリカ国家安全保障局(NSA)がイギリス情報部と連携して解読した「ヴェノナ作戦」に関わる文書のことである。

第二次世界大戦当初、フィンランドに侵略していたソ連は、「侵略国家」として国際連盟から除名されていた。
ところが、ドイツがソ連を攻撃した41年以降「敵の敵は味方」ということで、アメリカのルーズベルト民主党政権やイギリスのチャーチル政権は、スターリン率いるソ連と組むようになった。戦争とは言え、ご都合主義すぎよう。
そのような流れの中でソ連に警戒心を抱いたのが、アメリカ陸軍情報部特別局のカーター・クラーク大佐であった。
クラーク大佐は43年2月、特別局の下にあった通信諜報部(後のNSA)に、アメリカとソ連本国との暗号電文を傍受・解読する作戦を指示した。
ヴェノナ作戦と名付けられたこの暗号傍受作戦は44年、ホワイトハウスから中止を命じられたが、彼らはその後も密かに作戦を続行し驚くべき事実を突き止めた。ルーズベルト大統領の側近たちに、ソ連の工作員と思しき人たちがいたのである。この情報は長らく国家機密として非公開にされてきた。
歴史物が大好きな『NHKスペシャル』がなぜこのヴェノナ文書に飛びつかないのか、本当に不思議である。

日本もアメリカの軍幹部も早期終戦を望んでいたにもかかわらず、終戦が遅れたのは、対日参戦を望むソ連が、在米の工作員たちを使って早期終戦を妨害したからだといわれている。
45年2月、ヤルタ会談において、ルーズベルト大統領は、ソ連の対日参戦の見返りとしてソ連による極東の支配をスターリンに約束した。
しかし、ヤルタ会談での密約は所詮、口約束に過ぎない。スターリンからすれば密約を確実に実現するためには、なんとしても対日参戦に踏み切り、軍隊を侵攻させ、満洲や千島列島などを実質的に軍事占領する必要があった。

戦力に限りがあったソ連としては独ソ戦を片付け、東欧諸国を軍事占領したあとでなければ、極東地域に軍隊を送って満洲や日本に侵攻することはできなかった。
日本が早期に降伏してしまったら、ソ連は対日参戦ができなくなり、アジアを支配下に置くチャンスを失ってしまう。
「ソ連の対日参戦を実現するまで日本を降伏させるな」
ソ連のスターリンのこうした意向を受けた終戦引き延ばし工作が、日本に対してだけでなく、アメリカのルーズベルト、そしてトルーマン政権に対して行われていた。
その工作の結果、ソ連の対日参戦が実現したし、それと並行して中国や北朝鮮という共産主義国家が誕生してしまったのである。
同書の後半では、台湾と朝鮮に関する戦後の戦いに論点が移行する。
ソ連は表立って米国と対峙することを避け、後ろで糸を引いて中国と北朝鮮の尻を叩くことで短期決戦によりで実利を得ようとしたが、国民を見捨てて真っ先に逃げ出した李承晩はヘタレであったが韓国国民が共産革命を起こすことがなかったのが、ソ連の目論見違いとなった。
中国も、朝鮮半島にはさして色気を見せず、台湾の方に意識を向けていたから、その間に米軍が反攻できたということである。
1949年、金門島に人民解放軍が上陸を開始し、アメリカに見捨てられた台湾は中国による「開放」の危機に瀕した。これを迎え撃ち、中国の野望を阻止したのは、なんと戦後占領下にあった日本の根本博中将だった。それがなかったら、台湾は共産中国となっていたであろう。
1950年、アメリカの誤った政策を背景に、ソ連は北朝鮮に対して南朝鮮占領のための侵攻を許可するも頓挫した。それを受けて中国は台湾「開放」を一旦休止する。朝鮮戦争に注力するためであったが、これも途中で諦めざるをえなかった。
一見独立した争いに見える台湾と朝鮮半島は、影に潜むソ連と中国共産党の意思でつながっていた。やり方が汚いのである。このつながりは現代においてもなお健在である。そのことに気が付いている日本人はどれほどいるのだろうか。

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