2020年7月18日土曜日

予算を倹約した結果が


九州を襲った豪雨は、甚大な被害をもたらした。財産的損失も大きいが、失われた人命は取り返しができない。
平時にあって有事に備えるのが政治だと思うが、そういうことに真剣に対処していたとは思えない。知事に選ばれたのは民意であったとノタマッテ終わりでは、堪ったものではない。

この水害で思い出されるのは、川辺川ダムの建設中止である。2009830日の衆議院議員選挙があり、民主党が大勝、政権交代が成った。民主党の公約の中に「コンクリートから人へ」というものがあり、そのシンボルだったのが「東の八ッ場ダム、西の川辺川ダムの中止」だった。  当時のマスコミは、民主党への政権交代という熱気の中で、八ッ場ダム・川辺川ダムの建設中止に異を唱える動きは全くなく、中止大賛成の大合唱だった。
公共事業の適切な執行について、先進国での結論は、ほぼすべてで、公共事業は基本的にコストベネフィット分析に依拠しており、政治とは一定の距離を置いて、客観的な判断によって遂行されることが普遍的であるとされていた。
川辺川ダムのコストは4000億円、予想される便益は5200億円程度だとされていた。公共事業としては問題ない。川辺川ダムのコスト4000億円のうち、中止までに2800億円が支出されており、残りは1200億円だった。  サンク・コスト論では、コスト1200億円をかければ便益5200億円程度となるので、中止すべきではなく、工事続行が正しかったとなる案件だったといえる。
つまり、理論上とはいえ、八ッ場ダムと川辺川ダムの建設中止を掲げた民主党の公約は、大間違いだったということになる。
当時の前原誠司国交大臣は間違いを認めなかったが、八ッ場ダムの場合は都知事など関東各都県の知事が中止反対を唱えた。それらの意見に抗しきれず、結果としては民主党が折れて、201112月に建設再開が決まった。
201910月から試験運用が行われ、その直後に令和元年東日本台風が来た際には治水効果を発揮している。
一方、川辺川ダムについては、地元熊本県において、20083月に「脱ダム」を主張する蒲島郁夫氏が知事選に当選し、現在にいたるまで知事を続けている。蒲島氏は、当時から「ダムによらない治水」と言い続けている。
「ダムによらない治水」の具体的な策としては、(1)遊水池、(2)放水路、(3)引堤(堤防を川の両側に広げること)(4)堤防嵩上などの方法がある。
しかし、それはダム建設以上に予算がひつようである。事実、資金不足を理由として、治水事業は進展していないという。
目先の金を惜しんで、その何十倍もの損害を防げなかったというのが、酷な言い方かも知れないが政治結果ということになる。
「二番では駄目なんですか?」という質問に、世の中への理解度が端的に表れている。
一番になるということは、その過程の中に圧倒的な革新技術が積み重なっているということに外ならず、努力なくしては叶わないことなのである。
目先の耳障りの良い言葉に惑わされると、結果的にはのちに大きな負担を自らが負わねばならない事態を招く。

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