2015年7月8日水曜日

進行中の小説 第一部の終了部分

春ともなると、群咲く桜の花のもと、この地の神社の祭りがとりおこなわれる。
下伊那地方の神社の祭りには、獅子を舞う地域が多いが、獅子曳きを伴った獅子も随所
に見受けられる。
座光寺の獅子の行列は、高丘の森の古墳から出発して、麻績神社に納められる。この獅
子は盲目で、しかも大変な暴れものということになっている。
右から左から真後ろからと襲い掛かる獅子を、獅子曳きの稚児、梅王丸、松王丸、桜丸
の三兄弟が手綱で叱り叩きなだめ、獅子がおとなしくなったところで神社の方角を指し示
し、「あの神社に行くのであるぞ。」と諭す。
この獅子と獅子曳きを護るのが、甲冑に身を固めた天狗である。前に赤天狗、後ろに青
天狗が居て、ときに集まった見物人に怪我人が出るほどの手荒い警護をする。
天狗が身を挺して守るのは、獅子と獅子曳きなのであるが、中でも獅子の尻尾に見立て
られる「獅子花」と呼ばれる和紙を紅白に染めて作られた縁起物の牡丹に似た花を取られ
ぬようにすることが要となる。獅子花をとると縁起がよいということになっているから、
隙あらばと、見物人が獅子にむらがる。
これらの仕来り通りの仕種をするのは、数々の、人知れず埋もれてしまった先人のお陰
であるとの意識が、知らず知らずに形を変えて人々の記憶に止まっているからなのかも知
れない。
神様のお使い役ということになっているのだが、この祭りにも天狗がいて重要な役割を
果たすことは興味深い。

祭りが行われるのは、入学式の季節でもある。


私が書いた小説  (購読無料)の第一部の終盤部分


幕末から現代に生まれ変わって、超常現象を介して話しが進むシリーズ。第三部進行中。
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