2017年11月18日土曜日

とにかく素晴らしかったピアノコンサート

11月17日の王子ホールでのコンサートは、日本・チェコ国交回復60周年を記念してというテーマで組まれたプログラムで、構成もよかった。
曲の合間にされた解説や関連したトークも、楽しいものであった。

ベートーヴェンの「月光」を久しぶりに聴いた。
この演奏のように、第2楽章と第三楽章は間を開けず連続して演奏するのが良い。圧巻であった。

最初にホールでこの曲を聴いた時のことを思い出す。
茨城県の鹿嶋市に人間爆弾兵器であった「桜花」が防空壕の中で今も保存されている。
戦時中、ピアノが好きで音楽学校に進んだ若者がいたというが、志し半ばにして繰り上げ卒業とされ、特攻兵として養成所へ入所することになった。
どちらかといえば、武より芸術系の人間であった彼が、出撃前夜、最後にもう一度だけピアノが弾きたいと願い、某小学校のグランドピアノで最後に『月光』を弾いたのだという。
如何なる想いであっただろうか。
激情が迸るような第3楽章は、聞く人とて居ない中での弾き納めとして、悔いないものであっただろうか。

「月光の夏」にゆかりがある鹿嶋市でのリサイタルで、主催者に乞われて、彼がベートーヴェンの月光の全楽章を弾いたのは、もう12年前のことになる。
その後のコンサートでも度々プログラムに入ったが、その時の感情で多少弾き方を変えているように感じる。曲をどのように表現するかということで、月光は弾くことが難しい曲とされている。
生の演奏を経験してもらうため、小中学生のためのレクチャーコンサートをライフワークにしている彼が、演奏後に届けられる感想文のなかで、ベートーヴェンの「月光」とショパンの「英雄ポロネーズ」についてのものが圧倒的に多いのだという。
難解な曲だと思うが、子供にも感動される名曲なのだと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿