2017年5月27日土曜日

読み聞かせ童話「縄文土器とカエル」

今から1万5千年も昔のことになります。
日本には縄文時代と呼ばれる時代があって、開けた文化がありました。
人々が集まって住んでいた跡(あと)からは、貝塚がでてきたり、穴を掘って住んでい
た住居の跡がでてきたりします。
皆さんもご存知の、縄文土器というのも沢山出てきます。
その土器の表面には、縄の模様がくっきりと刻まれています。
なぜそのような模様をつけたのかを、一所懸命研究している学者さんも多いのです。
いろんな説があります。
縄の形からすぐに思い浮かぶのは蛇です。
蛇は何回も脱皮を繰り返し、そのたびに大きくなるので、蛇は死なないのだと信じられて、
いました。
ですから、土器の中に入れるものが長持ちするようにと願って、器の表面に蛇の模様を
つけたのではないだろうか、というのです。
蛇は、不思議な力があるのだと思われていたようです。

縄文土器のなかには蛙が描かれたものがあります。
蛙は神話のなかでは死の世界に近いところに住むいきものだとされていたようです。
縄文土器に描かれた蛙の背中には女性の姿が描かれていたり、赤ちゃんの顔が描かれて
いたりします。これは死の世界から命が生まれることを現わしているというのです。
縄文の人は、生と死を別のものとは考えずに、一続きのものと考えていたのではないか
いうことになります。
縄文時代中期の集落は、広場を中心にして周りを住居が取り巻いている形をしているこ
とが多いのですが、その広場には死者の遺体が埋葬されていました。
みんなの生活の場の中心に、墓地があったのです。
生の中心に死があり、死の中心に生があるというふうに思っていたのかもしれません。

カエルが描かれたのは、ヘビに対するのと同じように、生き物への感じ方が有ったのだ
とおもわれます。
カエルも、オタマジャクシから育って足が生え、シッポがなくなってカエルに変身します。
蛇もカエルも、決して気持ちの良いいきものではないのですが、どちらも姿を変えてい
くことで敬われていたようです。

カエルという生き物は、水(霊の世界の象徴)と陸(現実の世界の象徴)二つの世界で
生きることができることから、きっと「福神」や「守り神」だとしたのかも知れません。
ですから、カエルには、財運がつくという嬉しい意味も持たれるようになりました。
後の世では、カエルの夢を見るのも縁起がよいとされるようになっていきました。
カエルという言葉は、「変える」「帰る」「孵る」「買える」と同じひびきをもった言葉に
通じあいます。
日本語には、同じひびきを持った言葉は、意味があることが多いのです。

大きくなったら、「古事記(こじき)」を読んでみると良いかもしれません。
想像力がふくらみます。
カエルも出てきます。かえる(ひきがえる) です。
小さい神(スクナヒコ)が誰であるか、案山子(くえびこ)なら知っているだろうと教
えてくれました。
カエルの事をタニグクと呼びました。
「たにぐくのさ渡る極み」という表現で出てきます。国内いたる所くまなくという意味
です。谷をくぐるからという説もあります。
この谷は、太陽の出てくる穴、陽谷のことだと推定する人もいます。
ヒキガエルは、日招き(ひまねき)ガエルだといいます。
古代の人は、カエルに神秘性を感じていたようです。中国では、月の中にヒキガエルが
いるとされてます。毎日、形を変える月には、変態するカエルがふさわしいとしたのか

もしれません。西洋にも似たお話があるそうです。

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