2017年5月8日月曜日

童話「トイレの神様」

お祖母ちゃんと、まだ小さい孫が、デパートに買い物に行きました。
楽しさのあまり、トイレに行くのを我慢していたので、トイレに入ったとき孫は焦っていて
ついつい粗相をしてしまいました。
「あらあら汚しちゃったわね。キレイキレイしましょうね。」お祖母さんはそういうとトイ
レットペーパーをくるくると巻き取り、周りを拭き清めました。
「お祖母ちゃん、そんなことをしなくっても、係の人にやってもらえばいいじゃん。」と孫
がいうのに対して、
「そうじゃないのよ。おトイレには偉い神様が居て、人々の行いをじっと見ていらっしゃる
のよ。」と諭しました。
そうなのです。日本の国には何にでも神様が住み着いています。八百万と呼ばれるくらい沢
山の神様がいらっしゃいます。
神様たちはそれぞれに分担する役割が決まっていますが、おトイレを分担するのは、神様だ
って苦手に思っても不思議はありません。
そこで、徳の高い神様が名乗り出て、それをすることになりました。
その代わりに、人々に運を授ける力を多く持つことを、他の神様たちも認めました。
ですから、良い行いをしているとご利益が頂けることになったのです。
お祖母さんは続けて孫に言いました。
「おうちも新しく建て直したでしょ?運の神様は、大きな袋に運を一杯詰め込んでやってく
るから、重くて早く歩けないの。家に到着した時は他の神様が順番で居るところを決めてし
まった後で、トイレしか残っていないの。だから、おうちのおトイレも綺麗に使いましょうね。」

大昔の人たちは、神様のお姿を見ることができましたし、人によってはお話しすることがで
きました。
山からの幸も海からの幸も、神様からの贈り物だとわかっていましたから、来年のことを考
えて、決して取りつくすということはしませんでした。
木を伐って柱を作ったり薪をこしらえた後には、新しい苗木を植えましたし、釣り上げても
卵をもった魚は海に返しました。
いつのころからか、自分勝手な振る舞いをする人たちが増えて、それとともに神様は遠ざか

りました。

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