2017年5月25日木曜日

童話「ホトトギス」

ホトトギスという鳥がいます。
日本では、その悲しそうな鳴き声から、和歌によまれた数が多い鳥です。
「まんようしゅう」では153、「こきんわかしゅう」では42、「しんこきんわかしゅう」では46もあ
るほどに、したしまれていました。
夜に鳴く鳥として、めずらしがられたり、その年に初めて聞くホトトギスの鳴き声を「しのびね」
と呼びならわし大事にしました。
のどのおくが赤いことから、鳴いて血を吐くホトトギスという悲しい呼び方もあります。
カッコウに似ているのですが、鳴き声がちがいます。
早口言葉でいわれる「とっきょきょかきょく」と鳴くことでしられていますが、こども
のころにお母さんから聞いたお話しでは、「お・と・と・き・た・か」と鳴いているのだ
というのです。
「弟 きたか」と何回も鳴くのです。

むかしむかしあるところに、二人だけで住んでいる兄弟がいました。
お兄さんは体が弱くて、いつもお布団でねていました。
お兄さんおもいの弟は、毎日せっせと食べ物あつめにでかけて、栄養のあるおいしいも
のをもってかえって、自分は食べないでも、おにいさんにはお腹いっぱい食べさせてい
ました。
それがどんなに大変なことなのか、働いたことがないお兄さんにはわかりませんでした。
あるとき、お兄さんはうたがいをもちました。
「おれが毎日こんなにおいしいものを食べているんだから、弟はもっとおいしいものを
食べているにちがいない。」
そこでお兄さんは、ほうちょうで弟の腹を切って中を見てみたのです。
お腹の中には、木の葉や草などそまつなものが少ししかありませんでした。
おいしいものはぜんぶ、お兄さんにあげていたのです。
弟はしんでしまいました。
後悔してもおいつきません。なげきかなしんだお兄さんは口から血を吐くまで泣きつづ
けました。
そして、そのまま鳥になって夜の空にとんでいきました。
ホトトギスになったお兄さんは、それ以来「お・と・と・き・た・か」と鳴くようにな
ったのです。


兄弟げんかしたときに「なかよくしなさい。」と言って、母から聞かされたお話しです。

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