2017年5月15日月曜日

童話「ヌエ退治」

むかしの古いおうちは、おトイレは家の外につくられていました。
おトイレは、ご不浄(ごふじょう)という名で呼ばれて、きれいなところとは分けられ
ていました。
昼間の明るいうちはよいのですが、夜になってあたりが真っ暗の中でトイレに行くのは
こわいので、子供たちは寝るまえには必ずトイレにいきました。
寝るときには、お布団の中で、お父さんやお母さんが寝物語というのを聞かせてくれて、
寝かせ付けてくれたものです。
「桃太郎さん」や「さるかに合戦」や「一寸法師」や「かぐやひめ」や「かちかち山」
のお話しです。
なかには、こわいお話しもありました。お化けが出てくるお話しです。

鵺(ヌエ)という、頭は猿、四つ足は虎、体は狸、尻尾は蛇、鳴き声が虎鶫(トラツグミ)
に似ているという妖怪が出てくるのです。
ヌエの鳴く夜はおそろしい。

むかしむかし、「このえ天皇」のみ世で、あやしいことがおこりました。
ある時から、「せいりょうでん」という帝がすまわれている建物に、毎晩のように黒い煙
が立ち込め、不気味な獣の鳴き声が響き渡るようになったのです。
帝は病に倒れてしまい、薬も祈祷も効きませんでした。
「このわざわいをなくすように。」という命令を受けたのが、弓の名手であった源頼政
(みなもとよりまさ)でした。
「よりまさ」のご先祖は、「みなもとよりみつ」といって、大江山に住んで都の民を苦
しめた「酒呑童子」という鬼を退治したことで有名です。
どんなに強いさむらいでも、化け物を相手にするには勇気がいります。
「よりまさ」は、ご先祖「よりみつ」から受け継いだ弓で、清涼殿を包む不気味な黒い
煙に向かって矢を放ちました。
すると、矢を受けた黒煙は悲鳴を上げながら鵺の姿になり、地面に落ちてしまいました。
これにより帝の病はたちまち良くなり、よりまさはご褒美として、天皇家に伝わる宝刀

の「獅子王」を授かったのでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿